ヘルスケア市場やウェルネス業界において、近年「CBD(カンナビジオール)」という言葉を目にする機会が大幅に増加しています。
北米や欧州などでは CBD関連製品の市場が急成長しており、食品・飲料・化粧品・サプリメントなど多岐にわたる領域に取り入れられています。日本国内でも、 規制の範囲内であればCBDオイルやCBDグミなどが販売されるようになり、専門のオンラインストアも見かけるようになりました。
CBDは大麻植物や産業用ヘンプに含まれるカンナビノイドの一種で、一般的に 精神作用が極めて弱いとされます。
これが同じカンナビノイドでも規制が厳しいTHC(テトラヒドロカンナビノール)との大きな違いです。
今回は、学術論文のトレンドから今後のビジネスチャンスについて解説します。
1. CBD研究の現状:学術論文が増える背景と数値
1-1. 学術論文数の増加傾向
CBD研究が世界的に拡大している証拠として、まずは学術文献データベース「 PubMed」での論文数を見てみましょう。
2010年頃、「cannabidiol」に関する論文はわずか200件程度しかありませんでした。
しかし、2025年1月時点では、「cannabidiol」で7,000件以上の論文がヒットしています。
単純に比較して約20倍に増加しており、ほとんどが2020年以降に追加されたものであることが画像からうかがえるかと思います。
基礎研究だけでなく、動物実験や一部の臨床試験に関する報告も多く、CBDが人体や動物の神経系・免疫系に与える影響を調べる動きが活発化しています。
1-2. 研究増加の要因を深掘りしてみた
最も重要なイベントが、米国における法規制緩和・整備ではないでしょうか。
米国では2018年に「Farm Bill」法が可決され、 産業用大麻の栽培が合法化される動きが加速しました。欧州各国でも医療大麻やCBDの取り扱いが比較的緩和されており、 研究がしやすい環境が整ってきたことが背景にあります。
睡眠障害やストレスケア、慢性的な痛みへのアプローチなど、多くの人が抱える課題に対してCBDが新たな選択肢になり得るとして、 製薬会社やサプリメント企業などが注目しました。特に、化粧品企業や食品企業は消費者への販売にあたり学術的なエビデンスを求めることから、論文数が急増したものと考えられます。
2. CBDの市場規模と成長性は?
グローバルな市場規模
近年、さまざまな市場調査会社がCBD市場のレポートを発表していますが、 その多くがグローバル市場において高い成長を予測しています。例えば、 Grand View Researchでは世界のCBD市場規模を 約51億8,000万ドル(約6,800億円)と推計し、2030年までに年平均成長率(CAGR)が 約16.8%で拡大すると予測しています。
また、Market Research Futureも、CBD市場の急拡大を予測しています。こちらは、化粧品や美容というよりも、特に食品・飲料セクターとの連携で需要が伸びると分析していることがわかります。欧米での規制緩和の流れが続けば、 さらに投資家や大手企業の参入が進む可能性が高いと考えられます。
一方で、中国や韓国をはじめとしたアジア諸国では麻薬類や大麻に関する厳しい法規制が敷かれており、当面は緩和される見通しは薄いとみられます。同様に、アラブ諸国等についても厳しく禁じられている可能性があるため、輸出先などにはかなり気をつけなければなりません。
日本市場はどうなる?
日本では2024年12月12日に施行した改正大麻取締法によって麻薬成分「THC」の成分含有量が厳しく規制されることになったため、THCを含まない形でのCBD製品のみが正規に流通できる状況です。
そのため、海外で抽出したCBD成分を輸入して国内で加工し、オイルやグミ、化粧品として販売するビジネスモデルが一般的です。
改正法の施行直後は事業者の逮捕事例も出てきていますが、大塚製薬などの大手企業も参入しており、クリーンな事業者が参入し始めている段階です。慎重な動向であるとみられています。
規制が整備される余地がある一方で、日本独自のルールや行政方針を見極める必要があるため、投資対象としてはリスク評価が欠かせません。
学術研究から示唆されるCBDの可能性とリスクは?
CBDをめぐっては、抗炎症作用や神経保護作用など、多方面での可能性を示唆する論文が増えているのも事実です。支持を集めている論文でいえば、「Frontiers in Immunology」に掲載された(Crippa JA et al., 2018)論文が挙げられます。
この論文では CBDの免疫調整作用や抗炎症特性について触れられています。
また、 「European Journal of Pain」(Schilling S et al., 2021)では、 CBDが慢性的な痛みにどう影響するかを検証した動物実験の報告がありました。
しかし、現状では濃度や投与量については、ヒト一般に対してこの量が適量という指針はなく、複数のCBDオイル製品を試すような方法で、個人での最適な投与量を探るといった手法が一般的です。
ビジネスチャンスはあるのか?
CBD単体の製品だけでなく、健康食品や化粧品に配合する形で販売を拡大する企業が増えています。 これによりサプリ市場や美容市場などの既存市場と掛け合わせることで、より大きなビジネスチャンスが生まれる可能性があると考えます。
一方で、CBD産業における最大のリスク要因は、各国の法規制が流動的であることです。日本でも同様で、 規制の見直しや新たな基準設定が行われれば、市場の盛り上がり方が大きく変わる可能性があります。
未承認成分を安易に医療効果として宣伝すると、薬機法などに違反するリスクがあるため、 企業はプロモーション戦略を立てる際に慎重な姿勢が求められます。
CBD関連企業やスタートアップへの投資を検討する際は、対象地域の法律やガイドラインに反しないか、 あるいは今後どのように変化する可能性があるかを確認することが不可欠です。
抽出技術や製剤特許を有する企業、学術機関との共同研究を進めている企業は、 長期的に競争優位を確保しやすいと考えられます。
大手食品・飲料企業や化粧品メーカーが積極参入すると、市場が一気に拡大する可能性もあります。 どのように消費者の信頼を獲得するかが、今後の差別化ポイントとなるでしょう。
5. まとめ:研究とビジネスの融合が生み出す未来
CBDをめぐる研究は今まさに拡大期にあり、国際的な学術文献は右肩上がりで増え続けています。 企業サイドでも製品開発やブランド戦略が活発化し、健康食品や化粧品とのコラボが新たな市場を切り開きつつあります。
ASA.tokyoでは、CBDビジネスを始めたいという方向けにOEMや原料販売等を行っております。詳しくは下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。
今後も最新の研究データや法整備の動向に注目しながら、CBDの持つポテンシャルとリスクを深く探っていくことをおすすめします。